企画展「てくてく、ふらり、のんびり 旅する浮世絵」

場所:北斎館   開催期間:2021-04-03〜2021-06-13  お問い合わせ:info@hokusai-kan.com

 この展覧会では、葛飾北斎が描いた全国各地の名所の風景や、旅人たちの様子を題材にした浮世絵をご紹介します。
 北斎は50代半ばから絵の仕事をする傍ら日本各地へ旅に出て、その先の気に入った風景をスケッチしていました。旅をする際、筆や帳面を持ち歩いていたという北斎は、目の前に広がる景色と出会った感動をその場で描き留めていたといいます。中でも北斎が心惹かれたのは霊峰、富士です。現在の山梨県や静岡県にも足を運び、のちに富士の雄大な姿や、峠の宿場町、街道をゆく旅人の様子などを描きました。その代表作が世界的にも有名な「冨嶽三十六景」であり、同作は北斎が旅を通して生み出した傑作と言えるでしょう。どんと構える不動の富士を背景に、せわしなく行き交う旅人や行商人、富士を望む早朝の宿場町を出発する旅の一行や、深い渓谷の間を進む人々。雄大な風景の中に旅人たちを描き、見ているこちらにも旅の雰囲気を味わわせてくれます。
 また、北斎は旅の名所として知られている橋や滝を題材にした風景画も多く描いています。北斎が74歳の頃に発表された、滝の名所を描いた風景画である「諸国瀧廻り」は、水がまるで自ら意思を持って動いているかのような流線表現や、現実ではありえない抽象的な描き方が特徴で、デザイン性の高い作品としても知られています。様々な姿を見せる涼しげな水の絶景に心奪われることでしょう。「諸国名橋奇覧」は日本各地の橋の名所を描いたものであり、江戸の人々の「いつかは行ってみたい」という憧れや好奇心を駆り立てたに違いありません。また、北斎は『北斎漫画』や『富嶽百景』などの版本作品の中にも多く風景を描いています。ゆったりと流れる雲、爽風に揺れる草花、道中のせせらぎは、見ている側を旅に誘うような感覚にさえさせてくれます。
 この展覧会では北斎の旅に関する作品を巡りながら、各地の風景、名所、人々の様子をまるで自らの足で歩いて周るような視点でご紹介します。北斎が描いた風景への旅へ出発しましょう。